手指の痛みはなぜ起きる?わかってきた女性ホルモンとの関係

手指の痛みを訴える女性の多いこと!

更年期、産授乳期あるいは月経前に手指の不調を訴える女性が多いこと知っていますか?自分もと思う方もいるでしょう。

最近の研究では急速なエストロゲンの変化(低下あるいは不安定)があることが分かってきました。

最初に手指の不調が出るのは閉経前後であることが多いのですが、この時期に病院に受診しても「年のせい」「使いすぎ」「治らない」といった説明がされることが多く、未治療のまま7~10年程度放置され関節変形が発症します。

手指の痛みはなぜ起きる?

手指の痛みもいろいろありますが、手根管症候群、ドケルバン病、ばね指、ヘバーデン結節、ブシャール結節など更年期以降に集中して発症しています。

「私の手はなぜ痛いの?」「どうして私だけが痛いの?」

この答えはよくわかっていませんでしたが、最近女性ホルモン、特にエストロゲンの変化と濃厚に関連していると指摘されるようになってきました。

女性ホルモン、特にエストロゲンが効果を発揮するにはエストロゲン受容体との結合が必要です。

エストロゲン受容体にはαとβの2種類があり、βは骨、脳、肝臓、前立腺、血管壁、肺、甲状腺、膀胱などに存在します。

ここで重要なのはβが関節包、腱鞘、靭帯などの滑膜に多く含まれることです。

女性ホルモン濃度の変化に伴う子宮内膜の肥厚の変化はそのまま滑膜の肥厚の変化に置き換えることができます。

女性が月経前に体が重く感じたり、手がこわばったりするのは、エストロゲン値の低下によって滑膜が腫れるためなのです。

更年期以外でも痛みが出るのはどうして?

更年期以降と産後授乳期に数十年の年齢の開きがあるにもかかわらず類似した手指の症状が現れるのは、エストロゲンが短期間に低下するという共通の状況があるためです。

また、出産を経験していない40歳前後の女性にも類似した手指の不定愁訴を訴える場合がありますが、これも一種のPMSと考えられ短期的にエストロゲン濃度が大きく変化(多くは急激に減少)することが原因と思われています。

原因はエクオールが作れない!?

更年期以降の女性はエストロゲンが低下しますが、すべての女性の手指に症状が出るわけではありません。

最近注目されているのがエクオールです。

エクオールは大豆イソフラボンの代謝の過程で産生されます。

豆腐などの大豆食品が腸内で腸内細菌によって代謝されてできます。

エクオールはエストロゲン受容体βと結合することでエストロゲンに類似した作用をもち、αではなくβと結合するために乳がんを引き起こす可能性は少ないとされています。

エクオールが更年期症状の改善に役立つことはわかっていますが、大豆食品を摂ればいいというわけではありません。

エクオール産生能力は人種や個人差があるのです。

大豆イソフラボンを代謝させる腸内細菌を体内に持つ人の割合が人種や地域によって異なる事実に由来します。

手指の痛みを訴える女性50人にエクオール産生能の有無を調べた結果48人(96%)がエクオールを産生できなかったそうです。

エクオールが作れないということが手指の変形性関節症や滑膜炎を引き起こす主な理由ではないかと強く推察されています。

私の周りにも手指の痛みで悩んでいる方がたくさんいらっしゃいます。

鎮痛薬の投与しか行われずに関節が変形するような症例を少しでも減らしていけるように、適切な予防につながるように女性ホルモンとの関係やエクオールについてお伝えしていきたいと思います。

まずはご相談ください。

引用文献:女性疾患としての手の痛み 平瀬雄一 女性医学会雑誌VOL25

コメント